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研究内容

 星の数ほどある有機分子の多様性が持つ一番の強みは、個々のニーズに精緻に、柔軟に対応できることです。有機合成化学は自分たちで望みの物質をデザインし、合成しこの世に産み出すことができる基幹技術です。特に私たちのグループではメリットが明らかながら十分な活用ができていない光エネルギー「近赤外光」に着目し、周期表全ての元素の性質を引き出す「元素化学」、特徴的な分子構造に着目する「構造化学」、色の魅力を引き出す「色材化学」の観点から新機能を有する材料の創出に挑戦しています。

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近赤外色素の合成化学

 光の様々な特徴は波長に依存します。ヒトの目に鮮やかに映る可視光(400~700 nmの光)よりやや長い波長(700~2000 nm程度)の光である近赤外光はヒトの目で知覚することができません。しかし、太陽光に無視できない量含まれるエネルギー源だけでなく、高い透過性や安全性といった観点から、近赤外光を活用できる材料はエネルギー・医療・環境など様々な分野で確実なニーズが存在します。私たちは著名な可視光色素であるフタロシアニンが様々な修飾および、中心に様々な元素を導入できる点に着目し、適切な分子設計を提案することで、近赤外光を活用できる様々な材料の合成に成功しています。

近赤外光反応の開拓

 近年、可視光をエネルギー源とする有機合成反応の開発が大きな注目を集めています。ここでもし、近赤外光をエネルギー源として同様の反応を行うことができれば、可視光材料の直接変換や、生体内をはじめとした遮蔽条件での選択的反応が実現できるはずですが、そのような触媒の具体的設計は行われてきていませんでした。私たちは近赤外色素を開発する過程で、これらが有する多彩な光・電気的特性を触媒設計に展開できると考え、世界に先駆け近赤外光をエネルギー源とする分子変換反応の開発に成功しました。触媒のバリエーション、反応形式を拡大することで、有機合成の新たな可能性が提案できると考え研究を進めています。

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新構造を提案、推進

 既存の色素を元に新しい材料を設計することは強力な手法である一方、元の色素の性質に依存せざるを得ない限界が存在します。私たちは有機合成技術を用いて、新しい色素骨格をボトムアップ的に構築することでこの問題を解決できると考えています。これまでに近赤外光と強く相互作用する有機金属錯体「ボール型金属錯体」や反芳香族性を有する拡張フタロシアニン骨格のボトムアップ合成に成功しています。これらが持つ特異な構造に由来した独自物性を探求するとともに、まだ見ぬ新たな骨格の探求を進めています。

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​ハブとしての有機化学

 私たちが有する有機合成技術の強みの一つとして、科学者や産業界が持つ問題を分子の言葉(構造)に翻訳できることが挙げられます。このような観点の元、国内外、産学多数のグループとの異分野共同研究を推進しています。オンリーワンの分子が持つ無限の可能性がハブとなり、新理論、新技術が広がることが私たちの願いです。分子の力を必要とする方はお気軽にご相談ください。

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